エービ-エヌ・アムロ・クリアリング証券代表取締役ショーン・ローレンス、日本の金融市場の成長に関する考察を語る


ショーン・ローレンスはエービ-エヌ・アムロ・クリアリング証券株式会社の代表取締役である。1997年以来日本を拠点とし、シンガポール、香港、イギリスにおいても勤務している。エービ-エヌ・アムロ・クリアリング証券は、マーケットメーカー、プロップトレード会社のため、高頻度取引、自動的な処理を専門とし、世界各国の取引所で、清算出来高第一位を占める。

ショーンはFIAジャパンの理事および市場管理委員会の委員長も務めている。


本誌:日本の金融業界において今後どのような成長が見込まれるでしょうか。 エービ-エヌ・アムロ・クリアリング証券は日本において最も多くETFの取引および設定を手掛けていますが、今後数年間、ETFはさらに成長するとみています。

ご存知のようにETFは、発行者がより正確なアンダーラインデータを電子化し、アセットマネジャーが標準な手順や手続きを受け入れ、設定解約の敷居を低くしたことにより、ここ2、3年のほんのわずかな間に取引が活発になりました。しかし、日本では現時点でETFの割合は株式市場において5%しかなく、その点からも成長が見込めると思います。特に機関投資家(日本の投資顧問会社)がもっと積極的にETF市場に参入すれば、個々のリスク選好に必要な“調整”となりETF市場が更に活性化するでしょう。

また、デリバティブ市場が大阪取引所(OSE)に統合されたことにより、JGBとTOPIX派生商品の必要経費がかなり低下したことで、全体の成長が見込まれます。OSEの日経投資家にとっては、ほぼ「ゼロコスト」で取引エンジンにJGBとTOPIXを追加でき、よって、更に多くの投資家がJGBやTOPIXに参入するだろうと考えています。


本誌:市場の成長に限界はあると思いますか。 金融業界は我々がフォーカスしきれていないたくさんの問題を抱えています。成長の妨げになるこうした問題には対処していかなくてはなりません。たとえば手数料を比較してみると、欧米のブローカーでは1枚あたり円換算でほぼ1円なのに比べ、日本のブローカーの手数料は高すぎると思います。それはなぜなのか。理由は日本の金融業界の非効率で時代遅れな慣行にあります。

ブローカー業者の中には、年次ライセンス方式ではなく、未だに「取引毎」の料金設定を続けているところがあります。ソフトウェアとサービスを「ライセンス」方式で購入した場合、投資家にとっては、取引を増やすほど1回あたりの取引コストが削減されることとなり、取引量を増やそうというモチベーションが生まれます。それが、出来高アップに繋がるのです。

しかし、様々な理由で改革に踏み出そうとしないブローカー業者がいます。昨今の取引高低迷のために、設備投資できないのも一因でしょう。また、過去にシステム投資を怠ってきたため、最新技術のスキルと経験を持ち合わせていないこともあるでしょう。しかしながら、業界全体はその硬直性に苦しんでいるのです。清算機関と保管機構における価格上の問題を例にしましょう。これらの機関の手数料体系は難解で複雑になっており、投資家は長年是正を求めています。清算機関と保管機構は、手数料体系を簡潔、明瞭、且つ適正なものとすべきです。それによって、市場の活性化と取引コストの低減が促進されるでしょう。しかしながらその実現は望み薄です。なぜなら、古いシステムを刷新して最新システムを導入する余裕がないブローカー業者の存在があるからです。

もうひとつの構造的非効率性は、同じアセットクラスにおいても、アンダーラインの違いによって清算処理が異なることです。証券取引法(慣習法上の)を例にとると、国債クリアリング機構が日本国債を清算し、日本証券クリアリング機構で有価証券を清算するという大きな違いがあります。また、東京金融取引所の派生商品の処理と比較すると、日本証券クリアリング機構での有価証券の派生商品処理や、(また別件で)日本証券クリアリング機構における国債関連の派生商品処理がそれぞれ分かれていること。また、「取引所」取引の有価証券の日本証券クリアリング機構における清算と、「取引所外」取引における有価証券の証券保管振替機構における処理方法に多大な違いがあることです。

このような例は非効率性と多額なコストが、日本の金融業界における成長の妨げとなっています。現況は、投資家に必要な若干のコスト低下を困難にしているのです。


本誌:市場にとってどのような改善が必要でしょうか。 取引所取引の手数料が良い例です。取引所手数料はシンプルに1枚あたりの価格となっているうえ、取引枚数が増えるにつれ割引されることです。これらの価格設定もまだある程度複雑ですが、市場の成長を促しています。日本の他の市場参加者も同様の価格改革を考えるべきです。

加えて、新規投資家を開拓する上で他にも壁はあり、その内容は既に良く知られています。すなわち、恒久的施設に対する課税問題や、錯誤取引に対する取消問題、テクノロジー市場の非効率、リモート会員制度の欠如などです。 更に、証券と商品の間にはまだ縦割り体制が残っています。これは、日本の金融市場にある組織的非効率性のもう一つの例です。

商品先物取引業者が証券業務に参入したいと仮定します。現行法ではそれが可能ですが、別システムに投資し、別枠の信認金を用意し、別個のコンプライアンス担当を置くなどの必要があります。

商品先物と証券先物が同じ規則に従い、同じ清算機関で処理されるようになれば、新規参入の壁は低くなるでしょう。これによって、事業の多角化を求める業者は必要コストを削減でき、更に多くの業者が多様な商品提供により成長を促進できます。

最後に、日本の金融業界においては次の2点が欠落しているように思えます。 まず、日本には業界全体の戦略的成長を議論する大手ブローカーがいないことです。全てのイニシアティブは、規制当局である金融庁が取っているようにみえます。これは、JPモルガンやゴールドマン・サックスが、米国の金融界において戦略的成長議論に全く参加しないのと同じ状況です。日本の大手ブローカーはもっと前に出て、戦略的成長について積極的に議論する必要があります。

もうひとつは、日本の金融市場を再生する取り組み中に、日本の機関投資家が欠如していることです。政府が経済成長を促進し、資本市場の発展を支援しようと多大な労力を費やしているのに対し、これらの機関投資家は日本企業に投資していません。日本の機関投資家は日本企業の将来に積極的に投資する必要があります。

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