新CEO、清田瞭氏が語るJPXのこれから


清田 瞭(きよたあきら)氏は、1969年に大和証券㈱(現㈱大和証券グループ本社)に入社し、その後債券部門を中心に44年間にわたるキャリアを築く。その間、大和証券エスビーキャピタル・マーケッツ㈱(現大和証券㈱)社長、㈱大和証券グループ本社取締役会長、同名誉会長を歴任した。2013年に㈱東京証券取引所取締役社長に就任。2015年6月より㈱日本取引所グループ代表執行役グループCEO(現任)に就任。


FIAJ:6月にJPXのCEOに就任しましたが、JPXグループのビジョンをお聞かせください。また、特にデリバティブについても併せてお聞かせください。

JPXは、“Your Exchange of Choice”、アジア地域で最も選ばれる取引所という将来ビジョンを掲げています。2013年1月にJPXが誕生し、今年度で最初の3か年が終了しますが、その間に市場参加者の皆様の御協力をいただきながら現物市場統合、デリバティブ市場統合、清算機関統合を速やかに完了することができました。

これからのJPXは、将来ビジョンの実現に向けて攻めに転じるときです。今年の9月には株式売買システム、来年央にはデリバティブ取引システム、それぞれのリニューアルを予定し、また、清算システムについても、次期清算システムに向けたロードマップを検討する等、インフラ面をより一層強化していきます。これをベースにいかにトップラインを伸ばしていくかが課題です。

JPXのデリバティブ市場は世界で15位、アジア内では9位に甘んじており、世界3位の現物株式市場と比べてアンバランスな状態です。また、JPXのデリバティブ市場の内訳を見ると、取引高のほとんどが国内株価指数先物によって占められています。デリバティブ分野で、新たな商品・アセット分野を育てていくことで現状を打破していきたいと考えています。これまでもJPX日経400先物や日経225Weeklyオプションの上場、超長期国債先物の商品性の見直しなど、既存の商品分野を伸ばすべく取り組んでいますが、今後はコモディティといった新たな分野への進出、国債先物のみに依存している金利分野の拡充は、アジアの取引所と戦っていくうえで重要な要素となります。

FIAJ:日本政府は都及び規制当局等と協調し、東京国際金融センター構想を進めており、また、JPXはアジア地域で最も選ばれる取引所を目指しています。この双方が達成されるには、何が必要でしょうか。JPXは、国際展開のために国境を越えた合併や提携について検討していますか。

東京市場の国際金融センターとしての地位向上のためにJPXとしてできることは、国内外の投資家に対して、多様な商品を取引できる場を提供していくことであり、総合取引所の実現は東京国際金融センター構想にとっても大きな影響を与えるポイントだと認識しています。 JPXとしては、アジアで最も選ばれる取引所となり、東京国際金融センター構想の一助となるためにも、早期に総合取引所を実現できるよう関係者の方々との積極的な意見交換を行っていきたいと思います。

国際展開としては、経済成長、実体経済でのつながり、金融資産の蓄積という面で海外ビジネス戦略の中心が「アジア」であることは言うまでもありません。中でもASEAN及び中国との関係強化が柱となると考えています。JPXでは、従来から提携や支援を通した関係作りに注力してきました。ミャンマーではジョイントベンチャーの形で証券取引所の設立に向け協力を行っており、本年中に取引所を開業する予定です。また、既にアジアにおいてシンガポールと北京に駐在員事務所を開設していたところ、昨年は香港にも事務所を開設しましたので、これらを拠点として、日本市場の魅力について一層積極的にアジアに向けて情報発信してまいります。これらを先例として、今後もアジア各国とのつながりをより強固なものにしていきたいと考えています。

FIAJ:本年5月に東京で開催されたFIAジャパン金融市場会議において、JPXは、コモディティ市場への参入に関して戦略的な意向を示しました。JPXとして、総合取引所構想についてどのように考えていますか。

海外の主要取引所は、エクイティ、金利・債券、通貨、コモディティ等、多様なアセットクラスを取り扱っており、ワンストップで顧客にサービスを提供するとともに、収益面でも特定の商品の相場環境にとらわれずそれぞれの商品が補い合っています。これはシンガポール、香港、韓国などのデリバティブ取引の伸長の著しいアジアにおいても同じ状況です。アジアで最も選ばれる取引所を目指すJPXとしてはアセットクラスの多様化は避けて通れない課題となっています。

日本では総合取引所の議論が8年前にスタートし、この間、金融商品取引法の改正に加えて、4回の閣議決定がなされています。本年6月末に閣議決定された「日本再興戦略」の中でも、「総合取引所を可及的速やかに実現する」こととされていますが、関係者間での実現に向けた協議はあまり進捗していない状況です。その間にも中国は、世界最大の商品需要国であることを背景としてコモディティ市場が非常に早いペースで成長しており、優位な立場を築きつつあります。

JPXでは、来年央に稼働予定の次期デリバティブ取引システムをTOCOMに提供することで合意しましたが、今後もコモディティのみならず金利等の分野も含めて、より踏み込んだ施策を実施していかなければなりませんし、関係者の方々の協力にも期待しています。

FIAJ:昨今、グローバルに規制変更が実施されていますが、JPXとしてどのような対応をお考えでしょうか。

2008年のリーマン・ショック以降、OTCデリバティブは世界的に規制強化が流れとなっています。そんな中、米国ではOTCの金利スワップの取引プラットフォームとしてのSEFや、OTCから上場物へという動きとしての金利スワップ先物等、規制をきっかけとして市場がダイナミックに変化することで対応しています。

従来から日本においてはOTCから上場物へという流れの中で、JPXでもかつてはFXを上場物として取り扱っておりましたし、日経225オプションの期先限月の拡充や直近でもWeeklyオプションの導入も行ってきました。また、次期デリバティブ取引システムにおいても投資家のリクエストに応じて臨機応変に権利行使価格を追加設定するサービス(オンデマンド・オプション)の導入等、OTCのフローの受け皿となるべく、今後も様々な取組みを実 施していきたいと思います。

今後実施予定の規制で影響が大きいと思われるのがOTCの証拠金規制です。実施時期は本年12月から来年9月に延期されましたが、清算機関を通じた清算が行われないOTCデリバティブに対して対象者間で証拠金の授受・分別管理を求めるものです。これまで配当関係の取引や個別株のオプションなどは、日本においては慣習としてOTCがメインの市場となっていましたが、今後は規制を背景として上場物へのシフトが起こるのではないかと考えています。

FIAJ:FIAジャパンの使命は、日本の金融市場の成長と成功を手助けすることにありますが、FIAジャパンがこの使命を果たすために期待することは何でしょうか。

FIAジャパンは、証券・銀行等の金融機関を中心に、取引所、ITプロバイダー、法律事務所など、日本の資本市場の様々なステークホルダーが加盟しており、また海外の投資家も参加するグローバルな組織です。そのため、広い知見を持ったメンバーによって、日本の資本市場を在るべき姿に近づけるく市場のニーズをまとめ上げ、市場の健全な発展のために規制当局や我々取引所に積極的に提言を行って欲しいと思います。例えば、海外市場に見られるように、総合取引所化のメリットはインフラの統一やアクセスの一元化等、市場利用者にとって最も大きいものです。FIAジャパンのメンバーが、グローバルな知見から積極的に議論・提言を行うことを期待します。

また、FIAジャパンを通じて、デリバティブの正しい知識や活用法を個人から機関投資家まで幅広い人々に発信していくとともに、本年5月に開催された金融市場会議のように、国内外の市場関係者に対して、広く日本のデリバティブ市場をアピールする機会を設けていってもらいたいと思います。

FIAJ:ありがとうございました。