東京都知事が「東京国際金融センター構想」を語る


舛添要一氏は、1971年に東京大学法学部を卒業後、国際政治学者としてテレビ、ラジオなどにも数多く出演し、幅広い人気を得る。1989年、舛添政治経済研究所を設立。2001年、参議院議員(2期)となった。参議院では予算委員会他、多くの委員会・調査会の理事・幹事を歴任し、2007年8月には厚生労働大臣に就任。2014年2月、東京都知事に就任した。


 本誌:昨年2月の都知事就任から既に1年以上が経過しました。都知事として、東京をどのような街にしたいというビジョンをお持ちですか。

私は常々「東京を世界一の都市にする」と公言しています。「ここで生まれ、生活し、老後を過ごしてよかった」と、あるいは「旅行でもビジネスでも、是非とも訪れたい」と、世界一思われる都市にしたいと思います。


東京は暮らしやすい都市です。治安の良さや環境の良さは知られていますし、交通も便利です。水道水もおいしいし、世界中のおいしい料理が食べられます。こういった都市の魅力を、もっと高めていきます。


福祉の面では、少子化を打破し、高齢者にやさしい街にします。地価の高い東京に保育所を作るために公園を活用したり、公営住宅の高層化建替えで土地を生み出して福祉施設を整備するなどの取り組みを進めていきます。また保育士や介護士の育成にも取り組みます。

環境面では、水素エネルギーを活用します。2020年東京オリンピック・パラリンピック大会を機に、水素自動車の使用など水素エネルギーを最大限に活用し、水素社会を早期に実現したいと考えています。


また、豊かな暮らしのためには、経済活動を活発にし、東京さらには日本の経済を強くしていく必要があります。産業の中でも特に付加価値の高い分野に着目しています。東京での関連企業の集積を活用し、創薬を始めとするライフサイエンス分野のビジネス拠点づくりを進めていきます。


本誌:東京をそのような世界一の都市にしていく中で、昨年7月に公表した「東京国際金融センター構想」は、どのような意味を持つのでしょうか。

都民の豊かな生活や、世界一の都市にしていくための施策の財源確保のためにも、経済を活性化し、富を生み出すことが必要です。わけても、経済の血液たる金融は特に重要だと考えています。

東京はかつてニューヨーク、ロンドンと並ぶ、世界の金融の拠点の一角を占めていましたが、20年にも及ぶデフレ経済の間に、その地位をすっかり後退させてしまいました。

しかし、金融機能の集積はやはり東京の強み。これと、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会開催という機を捉え、かつての地位を取り戻し、世界から人材、情報、資金が集まる金融センターとします。日本を引っ張る機関車である東京都が、金融センターとなって東京の経済を、更には日本全体の経済を活性化していくのです。それが東京国際金融センター構想です。


 本誌:東京が世界の金融拠点の地位を退いてから久しいですが、今から東京を再び金融センターにするために必要なことは何でしょうか。

人と情報の集約が必要。私は昨年ロンドンを訪れ、チャタムハウス(王立国際問題研究所)で開かれた金融円卓会議に参加しましたが、目の当たりにしたのはロンドンの強み。そこに行くと情報があり、ビジネスチャンスがある。東京もそれだけの魅力がある都市にしなければなりません。


まず、世界中の優秀な金融人材に来てもらうため、企業で働く外国の方々が住みやすい環境を作ること。ビジネスにしても暮らすにしても、日本の弱点は英語が通じにくいことでしょう。街中の案内表示で多言語表記を進めたり、外国語で診療を受けられる病院を増やしていきます。


次に、海外の企業がビジネスしやすい環境を作ること。国家戦略特区制度を使い、都心部で10ものビジネス拠点の開発をスピーディーに進めていくほか、外資系企業などが開業の手続きを一か所で行える「東京開業ワンストップセンター」など、海外の企業が活躍しやすい環境を整えます。英語による行政手続きも提供していきたいと考えています。

そして、なんといっても重要なのが、東京でのビジネスチャンスを作ること。先ほど述べたライフサイエンス分野や水素社会も、その有力なツールとなります。都自身も、都有地を活用した公共的な施設の建設や、福祉貢献インフラファンドへの資金供給などにより、自らビジネスチャンスづくりを進めていきます。


本誌:今、アジアの金融拠点はどこかというと、誰もがシンガポールや香港と答えるでしょう。東京が金融センターの座を取り戻すのは難しいのではありませんか。

日本には暮らしやすい環境、優れた技術、巨大な金融資産、勤勉な人々といったアドバンテージがあります。東京は洗練された都市です。海外からのビジネスマンも上質の刺激を受けるでしょう。最近、アベノミクスの効果で景気が回復してきた日本に対して世界からの注目が高まっていることは、昨年のロンドン訪問でも肌に感じました。

そうした中、2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、世界の耳目が集まり、また日本の復活のための千載一遇のチャンスだと思っています。

人材育成など時間のかかる取り組みもあり、道のりは長いですが、必ず達成できると信じています。


本誌:地方自治体である東京都に、どのくらいの権限があるのでしょうか。金融行政は政府の所管ですが、東京都にできることは何ですか。

東京都の役割は、大きく分けて二つあります。

一つは構想全体の推進に向けた先導役となること。おっしゃる通り金融の分野は、規制官庁たる国とプレイヤーたる民間の金融機関が中心となる領域ですが、東京都は規制官庁でないからこそ、オープンに皆さんと話し合えます。東京都が声をかけることで、国も民間も前向きに話を聞いてくれました。構想発表後、昨年9月には、国、民間が一堂に会する推進会議も設置しました。


もう一つは、国や民間と協働しつつ都自らの取り組みを進めること。先に挙げ、都有地の有効活用によるビジネスチャンスの創出や、生活環境やビジネス環境の整備もそうです。

そのほか、人材育成は時間がかかる取り組みですが、「まず隗より始めよ」ということで、首都大学東京大学院に高度金融人材育成コースを、2016年度に設置します。

また、こうした取り組みで金融センターを目指す東京の姿を内外に発信するため、世界の金融関係者や行政関係者、ジャーナリストが集まる国際金融会議を、3年後には開催したいと考えています。そのための準備に、国、民間とも協働して着手します。


本誌:大きな目標を掲げて動き出した東京都ですが、手応えはいかがですか。

先ほど触れた推進会議では、金融庁や財務省、経済産業省等といった中央官庁、銀行、証券といった金融界や、経団連など産業界の団体が集まり、皆で東京国際金融センターを実現していこうという力強い言葉を聞くことができました。


官民一体で、この取り組みを進めています。金融庁も本腰を入れて東京国際金融センターの実現に向かって動いています。民間でも、例えば日本証券業協会などが金融界に呼びかけ、やはり東京国際金融センターについて会議体を設置するなど、一つ一つの動きが着実に進んでいます。


まさに、オール・ジャパンで、東京を国際金融センターにしていこうというムーブメントが湧き上がっているわけです。だからこそ、私も「東京国際金融センター」の実現を確信しています。


本誌:ありがとうございました。