CFTCのジャンカルロ委員長 - 世界における規制の現状・動向を語る


J.クリストファー・クリス・ジャンカルロ米商品先物取引委員会委員長

J.クリストファー・クリス・ジャンカルロ氏は、2017年8月3日、米国議会により米国商品先物取引委員会(CFTC)の委員長に満場一致で承認された。委員長に就任する以前もジャンカルロ氏は2017年1月20日から委員長代行として職務をこなしており、3月14日には、トランプ大統領によって、2019年4月までの任期で会長に任命されていた。ジャンカルロ氏は、2013年8月1日、オバマ大統領によってCFTCのコミッショナーに任命され、2014年6月3日に議会が満場一致で承認、6月16日に正式にコミッショナーに就任した。 CFTC以前、ジャンカルロ氏は、金融サービス会社のGFIグループの上級副社長だった。GFIの前は、フェニックス・ソフトウェア社の上級副社長兼米法律顧問の他、いくつかの法律事務所で働いていた。また、ドッド・フランク法施行に関して議会で3回証言し、パブリックポリシーや法律の他、テクノロジーと金融市場を含む他の事柄についても幅広く書き、語ってきた。

ジャンカルロ氏はVanderbilt University School of Lawで法律の学位を取得、1985年以来ニューヨーク州の法曹界のメンバーである。


本誌:あなたは2017年1月にマサド前委員長の辞職に伴い委員長代行となり、最近、議会によってCFTC委員長に任命されました。2016年に比べて、最近の委員会および規制についてどうお考えですか。

ジャンカルロ:私がCFTCの新しい委員長に就任したことだけでなく、新たに2人のコミッショナーがCFTCに加わったことも大きな変化です。米国議会は今年8月、ブライアン・クインテンツ氏とラス・ベーナム氏を新コミッショナーに任命しました。CFTCのコミッショナーであるクインテンツ氏とベーナム氏と一緒に、われわれ3名のコミッショナーは今、新たなルール作りやCFTCにとって重要な他の事項を考える体制が整いました。


国内的には、CFTCの規則を簡素化し、積極的に新しい挑戦に応えるための新たな取り組みを始めました。今年初め、特に4分野について意見を求めるプロジェクトKISSの立ち上げを発表しました。クリアリング、トレーディング、保存データ、中間法人に関する登録、そしてスワップ・データの報告と保存、クリアリング、トレード執行の4分野です。目的は、これまで同じ目的を果たしてきた既存の規制より、少しでも負荷が軽くなるものを考えることです。

プロジェクトKISS同様のプロセスを踏んで実施されたこれまでの規則作りからわれわれが学んだことは、改革のためにさらにアップデートされたフレームワークを確立するためには、われわれ自身に将来を見据える努力が求められるということです。CFTCは、CFTC自身が新しいテクノロジーについて理解を深めるために革新に関する情報を集め、技術革新者たちをより受け入れやすくします。

国際的には、私はこれまで公の場でも海外の当局者たちにも、規制当局間の妥当なルールを互いに認める重要性や、クロスボーダーの活動と企業をどのように規制していくかに関する食い違いをなくすることの重要性を話してきました。

CFTCは国際的なスワップ市場改革を実現するため最先端で動いています。他の規制機関がそれぞれの管轄地域でワップ市場改革を進めていますが、われわれは彼らと共に、ルールの矛盾が発生しないこと、またマーケットが分離しないために協力しています。このやり方はもともと、2009年のG20首脳会議で決められたOTCデリバティブ改革の際、取引の流れを止めないことを保証し、かつ市場における不要なあつれきを避けながらそれを達成することに役立ったものです。


本誌:日本の金融庁の森信親長官が、2015年後半に行ったスピーチで、多くの国々の規制当局が多数の新しい規則や規制を導入していることについて「規制の工場」という話をしています森氏のコメントについてどう思われますか。

ジャンカルロ:2015年のスピーチで、森長官は過剰規制に注意を呼びかけ、過度な、あるいは軽率な規制からは潜在的に予想外の結果が生じることを指摘しました。

私も森長官の意見に同感です。われわれは2009年のG20ピッツバーグ・サミット以来培われてきたすべての国際スタンダードを注意深く見なければなりません。この理由から、私は新しいスタンダードの開発の代わりに現在までの改正の有効性をよりしっかりと見つめてきた金融安定理事会(FSB)と証券監督者国際機構(IOSCO)を強く支持します。CFTCはこれらの努力について指導的役割を果たしてきました。CFTCは、店頭デリバティブを清算するためにインセンティブの広範囲なレビューを行っているFSBのデリバティブ評価チーム(DAT)の共同議長をしています。FSBのDATが検証しているテーマの一つ、クリアリングにおける追加のレバレッジ・レシオの効果は良いものです。CFTCはまた、IOSCOのデリバティブ委員会の議長でもあります。ここでは今、店頭デリバティブ改正のすべてと、かれらが「効率的回復」を成し遂げているどうかを考察しています。


本誌:ヨーロッパで行われたように、日本も、HFT(もしくは「HST-高速取引」)を日本市場で行う会社の登録義務を含む独自の規制を導入するかもしれません。こうした動きについてはどう思われますか。米国の状況・予定はどうなっているのでしょうか。世界の規制当局にとって、治外法権の問題を解決するにはどうするのがベストなのでしょうか。

ジャンカルロ:電子・デジタル世代を受け入れようとしている日本は賞賛に値します。20世紀のアナログの金融市場はもはや存在せず、既存の規制は今日的な挑戦に向けてアップデートしなければなりません。最近、CFTCは電子とデジタル革命をキャッチアップすることに踏み出し始めました。自動取引は今、規制されている先物市場の約70%を構成しており、これは将来にわたって増加することでしょう。われわれは2016年後半に、自動取引規則(RegAT)をまとめ上げました。それは、業界からのベストプラクティスを利用し、リスク管理のパラメータ設定にフレキシビリティを与え、アルゴリズムについて事前の承認や事前テストなどを要求しないというものでした。しかし、RegATは、自動取引の懸念に対する適切な対応には足りませんでした。より多くの市場参加者たちに登録を要求し、かれらをさらなる規制に服従させることは、ハイフレクエンシー・トレーディング(高頻度取引)に伴う複雑なリスクへの対応として不十分です。このことや他の欠点を理解し、われわれは今、この問題の新たな解決策を探れているところです。


正しいアプローチは、金融市場のデジタル化の発展の先頭に立って進み、革新を受け入れ、デジタル世代に向けて規則をアップデートし続けることです。CFTCと他の監督官庁は、フィンテックの持つ潜在的な利点もリスクもよく知っており、その利益を実現化し、リスクを監視するために開発者や市場参加者たちと共に働いています。われわれが最も関心があるのは、海外の規制当局と協力、調和し、互いのベストプラクティスを学び合うことです。


本誌:フィンテックやサイバーセキュリティーは、ますます中心的話題になりつつあり、それは私たちの業界も同様です。それについて、CFTCはどのように対処するのでしょうか。これは、国際的金融市場にとって脅威となるのでしょうか、それともチャンスになるのでしょうか。市場参加者は何に注目すべきでしょうか。

ジャンカルロ:CFTCは、我々の市場に取り入れられている革新とデジタル変化を取り入れます。われわれは、これらのテクニカルの進化を、世界市場のクオリティーや反発力、競争力を高める良い機会だと見ています。すでに投資家だけでなく、消費者や農家、牧場主も、マーケットにおけるテクノロジーの革新から利益を得ているとCFTCは考えています。金融市場のデジタル化は市場監督者にとっての新たな挑戦であることは疑いありません。

すでに言及しましたが、われわれは最近LabCFTCの創設を告知しました。LabCFTCは革新的なテクノロジー開発者がCFTCにより近づきやすくなるように設計され、新たに出てくるテクノロジーについての委員会の理解や、かれらがどのようにわれわれの現在の規則と関係するのかを知ってもらうためのプラットフォームとして提供しています。さらに、LabCFTCは技術主導の革新が政策にも影響を与えるかもしれないという観点から、CFTCにとって情報ソースでもあります。この両面がかみ合えば、革新的な技術者が関係当局とわれわれの監督のやり方を理解することを助けると同時に、CFTCにも規制や監督に役立つかもしれないその分野における新たな発展に触れる助けになります。良い規制は、革新的テクノロジーを押さえつけるべきでなく、むしろその革新のためのプラットフォームを提供するべきなのです。


本誌:あなたは最近、東京を訪れ、FIAジャパンの会員たちの前で講演されました。彼らと他の日本市場参加者たちに対して、あなたは主として何を伝えられたのでしょうか。またFIAジャパンがこの市場の発展のために最善のサポートを続けるにはどうしたらよいと思われますか。

ジャンカルロ:FIAジャパンへのスピーチで私たちは、過去と現在の経験に基づく改革の再調整の重要性を中心に話しました。スピーチは私の現在の優先事項について語ったもので、それはわれわれの改革の努力への評価と向上に焦点をあてたものです。G20の改革努力において、リーダーの一人として日本が重要な位置にあるというわれわれの思いを共有してもらうことが特に重要なことです。

スピーチでは、規制当局および市場参加者のニーズに合うように可能な限りより良く整理され、よりスマートで単純なやり方を確保するために進行中のCFTCのプロジェクトについて議論しました。必要に応じて、われわれは既存の規制をより単純に、軽く、そしてコストも安くしながら、それでも同じゴールを提供することを目指します。われわれが改革のために働き続ける以上、これでの経験から学びたいし、そうした調整を行うのは当然のことです。 スピーチではまた、新しい市場テクノロジーとサイバーアタックへの挑戦を含む展望も話しました。私の現在の優先順位には、テクニカルの変化に適切に応えるために規制を調整することを考えることがあります。われわれは、金融市場における安定性と柔軟性を推し進めながら、サイバー攻撃の脅威と戦うために、率先してテクノロジーを前進させるために働かなければなりません。他の優先事項には、我々のスワップデータの報告がタイムリーに仕事と調和するように進めることが含まれます。


本誌: ありがとうございました。