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日本市場の回復とともに歩む

マイケル・ロス FIAジャパン プレジデント– CEO


秋の凛とした空気が金融マーケットに一定の安定感を運んできた。日経平均株価は夏場の落ち込みから順調に回復しつつあり、また本号のそこかしこに見る通り、日本の健全なファンダメンタルズが投資家をわれわれのマーケットに持続的に惹きつけるだろうと信じるに足る十分な理由がある。


ニュースレター11月号では、各地域にあるFIA組織統合にスポットを当てている。FIAワシントン、FIAヨーロッパ、FIAアジアの合併に関しては“同僚”であるFIAワシントンのプレジデント兼CEOウォルター・ラッケン氏に直接話を聞く機会を得たため文章にまとめたが、合併に限らず、より広い分野について同氏の考えを共有することとした。


直近の米国出張中にラッケン氏とFIAワシントンオフィスで会話ができたのは幸運なことであり、FIAジャパンは今回の合併に含まれていないが、新たなグローバル規模の組織の密接な関係であることはこれまでと変わらず、今後も緊密な協力関係を維持することで合意に至った。昨夏にFIAジャパンの理事会メンバーとなったラッケン氏は、FIAジャパン会員ひとりひとりが果たす役割とその真摯な姿勢に対して謝意を共有している。


より視野を広げれば、世界の金融規制環境においては、投資資金と流動性に焦点をあてつつ2008年の金融危機の原因究明を継続する模様だ。だが注意したいのは、ここ日本では金融庁(FSA)がその他の事項にも留意すべきと強調している点で、それにはサイバーセキュリティー問題が含まれている。FSAの金融モニタリングレポート2014-15版は、同分野の脅威は“ボーダレス化かつ急速に複雑化した”と指摘している。FIAジャパンのテクノロジー委員会は同問題について最善の対処法を調査する予定であり、またFIAとは、FIAが有する能力や意見などを取り入れながら協力関係をいっそう強固にするつもりである。これらに関しては逐次、会員に報告する予定だ。


この他に日本で注視すべき分野としてアセットマネジメントが挙げられる。日銀の資金循環統計(季刊)によると、国内家計資産に占める現預金の割合は依然として5割を上回っている。こうした資産保有形態はデフレーションの間は有効といえる。現金を所有することにより、時間の経過に伴う購買力の増大という実質的な収益があるためだ。ところが日銀は、日本をデフレ圧力から脱却させると決めたようで、インフレターゲットを2%に設定した。仮にその計画がうまくゆけば、預貯金として保有されている資産の価値は目減りすることになる。とすればアセットマネージャーは、来たるべきインフレの時代に投資家の利益を守るための、より優れた、より高度なオルタナティブ商品を設計し、提供しなければならなくなる。


FIAジャパンは国内外のマーケットを視野に、そうしたオルタナティブ商品の実現に向け業界関係者および規制当局と動き始めたところである。本件に関する進捗状況はまた改めて報告する予定としている。

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