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2周年を迎えたEEX日本電力先物市場

欧州エネルギー取引所グループ

上席アドバイザー

高井裕之


2020年5月にEEXが日本電力先物取引の清算サービスを開始して2年2カ月が過ぎました。お陰様で取引量も参加者数も順調に伸びて我国おける電力先物の主要ベンチマークの地位を確立しました。この場をお借りして弊所をサポート頂いた電力業界、商品先物業界、経済産業省の皆さまに御礼を申し上げます。


営業を開始した最初の月には僅か2件・6枚・12GWhの約定しかありませんでした。それが今年6月には273件・1,380枚・932GWhまで約定数と出来高(電力量)が伸びてきました。枚数にして230倍、出来高にして78倍の伸びとなります。6月には開所来の累計出来高で10TWh(10,000GWh)に到達しております。



取引参加者も当初は3社でしたが、今年6 月末時点で41社が市場参加を果たしておられます。内、日本企業が21社、外資系企業が20社となっております。


これだけ言えば弊所の電力先物は大成功を収めたことになりますが、実は20年先輩のドイツ電力市場と比べるとまだまだ赤ん坊というのが実態です。日本ではスポット現物電力市場(日本卸電力取引所:JEPX)での取引電力量が先物の25~30倍もあります。これがドイツでは逆に先物市場がスポット現物市場の10倍の規模となっており日本の電力先物はよちよち歩きの域を超えていません。


取引参加者も日系企業が21社ですが実は日本には600社超の電力事業者が存在します。ということはEEX日本先物市場をリスク管理で使っている企業は全体の1/30に過ぎず欧州のように300社を超える企業が日常的に先物取引に参加しているのとは雲泥の差があります。


ご案内の通り欧州ではロシアからの天然ガス供給が戦争による政治的理由により大きく削減され相場が急騰しています。足元で夏を乗り切れても長く寒い冬がくればガス貯蔵庫が底をつき電力価格は過去に例のないボラティリティを経験する懸念があります。



日本にとっても欧州でのエネルギー危機は対岸の火事ではなくLNG市場を通じて火の粉が飛んでくる懸念があります。脱ロシア、脱炭素、脱原発とエネルギー資源のない我国にとってエネルギー安全保障を巡る環境の変化には激しいものがあり今まで以上にデリバティブを使ったリスクマネジメントが荒波を乗り切るための必須条件になりつつあります。


今後弊所がこの分野で果たすべき役割は極めて大きく少しでも先行する欧州の水準に近づけるべく精進していく所存です。サポート宜しくお願いします。




































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