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FIA最高経営責任者ラッケン氏、 市場規制とFIAグローバル合併 について語る


ウォルター・ラッケン氏は在ワシントンD.C.のデリバティブ市場の業界団体FIAのプレジデント兼CEO。FIAグローバルの最高経営責任者も務め、FIA、FIAヨーロッパ、FIAアジアの提携を監督している。FIAの会員には世界最大のデリバティブの清算会社のほか、20カ国以上の主要なデリバティブ取引所やクリアリングハウスが含まれる。ラッケン氏は2015年にFIAジャパンの取締役にも就任した。

現職以前は、NYSEユーロネクストとDepository Trustand Clearing Corpが共同経営するNew York PortfolioClearingの最高経営責任者を務めた。2009年に民間企業に入社する前は、2002年から商品先物取引委員会(CFTC)コミッショナーに就任し、委員長代理を1年半務めた。


FIAJ:FIAはFIA、FIAアジア、FIAヨーロッパが単一の組織へ合併する旨を発表したばかりです。このような決定を下すに至った理由やその目的、会員にとっての利点を教えてください。

合併によって、FIAは会員サービスを強化し充実させるとことができると喜ばしく思いっています。FIA、FIAアジア、FIAヨーロッパは以前から統合を推進しており、今回の合併はゴールに向けたステップです。この業界はグローバル化し、市場はますます相関性を高めているように、FIAも成長し、拡大しています。 2013年6月以来、FIAグローバルの下、各地域団体は互いに協働し、政策と優先順位をより良く調整してきました。合併はこの関係をさらに強化することになり、個々の団体のリソースと資産を一つに合わせ、より強力に政策提言活動を進めることができるようになります。つまり、今後は先物、オプション、コモディティおよびクリアードスワップ市場に対する政策や主張をグローバル規模で調整し、統一した意見として私たちの主張を最大限に打ち出すことができるようになるのです。


また、今後も地域のアドボカシーを行っていくことを重要項目に掲げています。アメリカ、アジア、ヨーロッパの地域スタッフと諮問委員会は、これからも政府関係者や業界の専門家と地域レベルでの建設的関係を発展、維持していきます。地域ごとの専門知識を活用し、FIAのグローバルな連携を拡大できるでしょうし、その逆も可能になります。


今後は会議、教育資源およびメンバーのコミュニケーションを強化し、よりグローバルな会員サービスを提供できるようになるでしょう。FIA会員は地域の専門知識とグローバルな連携の両方の長所を享受できるようになるのです。


FIAJ:リーマン・ショック後、米国と欧州の規制当局は、我々の業界に影響を与える重要な改革をいくつも推進しています。当局の計画は今どれくらいまで進んできているのでしょうか。次にはどのようなことが起こるのでしょうか。新しい問題としてはどのようなことが生じていますか。

世界的な規制の調整は、FIA合併準備が進む中、すでに会員がそのメリットを享受している領域です。ヨーロッパ、アジア、アメリカにおける清算問題について、FIAが現在どのように取り組んでいるかは、FIAウェブサイト上にまとめられています。


金融危機後、G20はリスクを軽減する方法として、中央清算を優先事項に掲げました。しかし、各国が実施した規制は、タイミングも内容も異なるため、複数国で清算を行う企業にとっては多くの課題が残ります。


そこで私たちは、規制当局同士の協力によって市場参加者やインフラが国境を越えて取引したり、機能したりできるようになっているか注意しなければなりません。CFTCに登録している米国に本拠をおく清算機関(CCP)は、欧州の市場参加者とビジネスを行うにあたっては、EU法の下、欧州と同等の規制を整えていると承認されることが条件となります。しかし、EUは他の非EU国のCCP同様、米国CCPを同等と認定にするには至っていません。


国際銀行連合会によると、EUが米国のCCPを同等であると認識しない場合、欧州の決済加盟銀行の資本要件は30倍から60倍にも増加する可能性があります。この問題に対処する必要があることは明らかです。私は長い間、相互承認と母国規制による代替えを前向きな解決策として提唱してきました。類似する規則や規制を認めることにより、各国の取り組みが重複することに伴う費用を削減しながらも、同等の成果を確保することができます。


FIAは、クロスボーダー規制要件の調和を優先課題として、米国と欧州で推進しています。調和は底辺への競争を意味するものではありません。私たちは、基準を押し上げることができると信じています。FIAでは、清算機関におけるリスクの評価と管理の方法についてレポートをまとめました。私たちの目標は、中央清算のリスクを透明かつ効果的に管理できるようにすることです。それはつまり、規制が国際的に調整されなくては、市場が地域ごとに分断され、流動性を失う危険性があるためです。私たちはグローバル市場でビジネスを行っており、地域的アプローチがそれぞれ競合すれば、全員にとって有益ではありません。

FIAJ:サイバーセキュリティは、多くの市場参加者にとって関心のある問題です。FIAジャパンテクノロジー委員会は、このテーマに沿ったプロジェクトを進行中です。FIAはこの脅威にどう対応していますか。


FIAは業界の重要な懸案事項としてサイバーセキュリティを優先的に取り上げています。攻撃の脅威は急速に広がっており、IOSCOは世界の取引半分以上がサイバー攻撃を経験したと報告しています。金融機関は他の産業に比べ4倍も攻撃される危険性が高いと推定している専門家もいます。

このように脅威が急速に拡大、進化しているため、企業を攻撃から完全に防護する方法はありません。100%のサイバーセキュリティを達成することはできませんが、優れたサイバーリスク管理で対抗することはできるというように考え方を変える必要があると思います。

米国では、金融サービス情報共有分析センター(FSISAC)への参加をFIA会員に奨励しています。同機関はサイバー脅威に関する情報をリアルタイムで提供し、サイバーセキュリティに関する教育を行う官民パートナーシップです。他方で、規制当局と業界の専門家と共同で、業界の健全性を確保するサイバーセキュリティ基準を定める作業を進めています。この際、サイバー脅威への対応は常に革新し、進化すべきものだということは留意しています。

大事なことは、皆で一致して問題解決にあたり、ベストプラクティスを共有することだと思います。この脅威に直面しているのは一人ではないのですから。


FIAJ:あなたは5月のFIAジャパン金融市場会議で基調講演を行ってくださいました。この会議では、どうすれば東京を金融センターとして確立し、日本がアジアのリーダーになれるかに焦点を当てた講演もありました。この可能性についてどう思いますか。東京は本当にアジアの金融センターとなることができるでしょうか。

FIAジャパン金融市場会議は、グローバル化や金融規制の展開が意味するより広い文脈の中でこの問題を捉えるという素晴らしい役割を果たしました。とにかく、国境を越えた活動を促進するインフラなしには大きく、持続的な成長は望めません。


日本が金融市場で影響を拡大しようとする際、市場を開放するというコミットメントがその強みになると思います。日本が強調する健全で規制のとれた市場とともに、このアクセスしやすいということが信頼をもたらし、成長を促進するでしょう。


市場を開放し、透明性を維持するというコミットメントは、日米経済の高度な結びつきの要因とも言えます。非常に多くの貿易や投資が両国間で行われており、雇用の創出、イノベーション、経済発展といったプラス効果が両国にもたらされています。米政府は今夏、安倍首相の訪米に先立ち、同国の対日投資は1,200億ドル以上、日本の対米投資は3,500億ドルで第2位の規模であることを発表しました。ですから皆、日本の金融市場の持続的発展に関心を持っているのです。


安倍首相率いる日本政府が日本の経済発展、特に金融分野の発展に最大限の努力を投じているのは明らかです。政府は先物取引をもっと魅力的にするための施策を打ち出しています。政策立案者や規制当局は自分たちの決定事項がどのように金融市場に影響を与えるかを注意して検討していますから、政府指導者が健全で強固な市場成長の重要性を理解すれば、市場発展を促進するのはずっと簡単になります。


昨今の日本の成長戦略を私は頼もしく思っています。すでに金融市場では復活の兆しがみえ、例えば日経平均株価指数は2013年以降ドルベースで37%上昇しています。日本取引所グループのデータではデリバティブ取引高は1兆4,000億ドル近くにまで達し、半年ベースで2番目に高い数字を記録しています。日本銀行が発表した最近のレポートでは、日本の金融システムは強力な損失吸収能力と高い弾力性を備えていると記述されていると思います。


こうした要素を鑑みると非常にポジティブな未来が見えてきます。日本を見てみると、市場が成長する準備が整っていることがわかります。将来に対し楽観的になっていい根拠は十分あると思います。


FIAJ:ありがとうございました。

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